7/27(月)迫りくる高音域
↑特にキツかった荻窪のコインパーキング。
駅近なのに、安くて、良いところなのですが、私を寄せ付けません。
街中を移動していると、よく音に苦しめられることがあります。
いわゆるモスキートサウンドというやつで、商用施設やひさしのある所に
人が溜まらないよう、なされた仕掛けです。
若い人が集まりやすいところほどキツく、
映画館やデパートの前だとか、目に見えないトラップがいっぱいです。
私はもう40歳近いのですが、ぜんぜん耳元から消えてくれない。
先日も齋藤と一緒に車を停める最中、係の人の作業があまりに遅く、
その間に鳴りっぱなしだったので、私は齋藤に財布を預けて、
建物から距離を取りました。
他にも音に関して苦手なものがあり、
それはここ数年売られるようになった、フリクションポイントノック0.4mm。
あれ、書き味は素敵なのですが、ペン先をしまう時にノックすると、
「キーン」という音が耳に響き、苦しい。
ところで、私にはあまり怒ることのない唐さんが必ず激怒するのは、
本番で役者のコンディション調整に失敗した時でした。
あらゆる舞台がそうだとも言えますが、
特にせりふが勝負の唐十郎戯曲において声が枯れることは許されません。
しかし、残念な本番を、20代の頃は何度も経験してきました。
そんな時に師匠は決まって、高音・中音・低音を使い分ける重要性を、
実演とともに説くのです。
唐さんの膨大なせりふに接すると、
キャリアの浅い役者はどうしても高音域一辺倒になります。
その中で、つなぎの中音域、低い声や小さな声も使えるようになれば、
ひとつコツを掴んだと言えます。
せりふの中身と渾然一体になる時、低い声や小さな声は
大きく高い声以上の威力を発揮します。
そして自分の声、他人の声を嗅ぎ分ける「耳」こそ宝物だと、
私たちは唐さんから教わってきました。
役者には長いせりふの中に適切な息継ぎ点を発見し、
呼吸の後に低音域に移行する技術が求められます。
そうすると、せりふが永遠に盛り上がっていくような快感が味わえるのです。

