12/4(金)祠(ほこら)の時間①
教授時代。2004.4.25。海辺で行った『ジョン・シルバー』公演
千秋楽の冒頭に立つ唐さん。
昨晩、『ベンガルの虎』を読んでいると書きました。
私は冬が近づくと、特に集中して台本を読みたくなります。
それには、私が師事し始めて以降の唐さんが、
よく11月に新作を執筆されていたことが影響しているように思います。
唐さんはこの時期をいつも、
「祠(ほこら)の時間」と呼ばれていました。
つまり、自分の内に篭って気を練り、
これからの指針を立てる時間にしようと云うわけです。
つまるところ、翌年の春に公演する作品を書き、公演を構想すべし。
学生時代から、私たちの秋公演本番は、
だいたい10月末から11月上旬に集中していました。
9月末から10月にかけて唐組紅テントが公演を終えると、
バトンを受け取るようなタイミングで私たちは公演してきました。
学生時分は全日、教授職を退かれてからも、
初日・中日・楽日という具合に唐さんは公演に立ち会って
くださいましたが、この時期の唐さんはいつもより緊張感があり、
あの大きな瞳が、ちょっとギラギラして感じられました。
あ、執筆をされているな、と私は思ったものです。
そういう時期は、いつも饒舌な唐さんが、しばしば宙空を見つめながら
「今は黙っているべきだ」というオーラを漂わせていました。
それから少しすると、「1幕」とか、
あるまとまった部分まで書き進めて感触を得ると、
今書いている芝居のモチーフや面白い場面について
お話をしてくださったものです。
唐さんが繰り広げる執筆中の芝居の話はすこぶる面白い。
しかしどこかで、唐さんはこちらの反応を伺いながら、
台本の出来をさぐっていたようにも感じられました。
そういうわけで、伺いながらやっぱり緊張したものです。
年末までに新作を書かなければならない、
いつも唐さんはそうおっしゃっていました。 〜つづく〜

