ダンゴムシとの生活(椎野)
「ダンゴムシを捕まえに行こうよ」
ジメジメとした草深い藪蚊が舞う場所に連行された。
あの足の多さにはやや抵抗がある。
小さな頃は好きだった。
羽のついている虫は次に出る行動の予測がつきづらく
こちらに飛びかかってくるのではないかとひどく怯えたものだけど
ダンゴムシは安心感があった。
枯葉と草をかき分けてみると、とんでもない量がうごめいてる。
スーパーのビニール袋に容赦なく投げ込まれるダンゴムシ。
「模様のあるのがメスなんだ」
「石もコンクリートも新聞も食べるんだ」
「好物はチーズなんだ」
「お腹の中に卵を産んで、お腹で赤ちゃんが生まれるんだ」
どこでそんな知識を得たのか。
結構長く生きてるつもりだけれど
私にそんな知識が介入してくる機会は一度もなかった。
昨年、カブトムシの幼虫が成虫になった翌日に、
大量のカブトムシゼリーを残して旅立った(逃げ出した)
虫かごが大量のダンゴムシの家になった。窮屈そうだ。
早速チーズをあげたら、凄まじい食いつき。
非常においしそうに食べていた。
「湿った場所が好きなんだ」
毎日、霧吹きでシュシュッと水を吹きかけている。
そして、たまにその水に溺れてダンゴムシが死んでいる。
公園で巨大な葉っぱを拾ってきて餌のつもりだけれど
彼らにとってはいい隠れ場所ができたようだ。
「ダンゴムシはなんでも食べるんだ」
残りもののラーメンの麺や卵の殻も入れた。
「秋になったら元の場所に戻すんだ」
まもなく、夏がはじまる。

