1/18(月)今年度、最後の講義
↑いつか行きたかった武者小路実篤記念館は休館でした。残念!
本日は、非常勤講師として通った桐朋学園の講座の最終日でした。
週に一度、第三京浜から環状8号を進み、
千歳温水プールを左折して仙川に向かう生活も、これで一区切り。
アリストテレスの『詩学』から、
ワーグナーやリヒャルト・シュトラウスのオペラ、
宮崎駿のアニメも題材にテキストを読む手ほどきをしましたが、
唐さんの作品からは、『少女仮面』『唐版 風の又三郎』を経て、
『ジョン・シルバー』を読み込んでいきました。
こう並べたところで、
最終的に『ジョン・シルバー』がしっくりくる感じでした。
24歳の唐さんが書いた台本は、自分がいまだ何者でもない焦りや
将来への野心、自分と対話する時間だけが膨大にある若者の孤独と不安に
充ちていて、時代を超えて共感を呼ぶものだと実感しました。
彼らに、今は大家として名を馳せる唐さんにも
そんな時代があったことを知って欲しかった。
作家が隔絶した存在でなく、身近な隣人になる体験を味わって欲しかった。
そうすると、時にせりふに慰められ、物語に鼓舞される瞬間が訪れ、
これからの生き甲斐につながると思いました。
彼らは演劇科の学生ですから、
いつも多くの台本や演出家の先生に揉まれています。
まるで人付き合いをするように、これから関わる作家や作品に
向き合うようになってくれたら、この上なく嬉しい。
最後に皆に感謝を伝えた後、何か質問はないかと訊いたら、
これから演出にも挑戦したいという熱心な生徒が、
「不条理演劇をどう捉えれば良いのか?」という質問を寄せてくれました。
私が答えたのは、「不条理演劇」というレッテルを貼って
思考停止してはいけない、ということです。
極限すると、根本的に「不条理演劇」などというものは無い(笑)
ベケットだって、別役さんだって、もちろん唐さんだって、
私にとっては共感の対象ですから。
「なんてじめじめした陽気だろう」と老人二人が連呼し続ける場面だって、
かつて大久保鷹さんが私に教えてくださったように、
高温多湿の日本への讃歌に違いない。
(今週、唐組が上演する『少女都市からの呼び声』にも出てきます!)
そういうセンスで、これから向き合う難解そうなテキストにも
果敢に挑んでいって欲しい。
それにしても、
一人一人の顔を思い浮かべながら成績をつけるのは大変で、
たくさんのレポートを稽古場に並べて苦慮していた唐さんの気持ちが
よくわかりました。

