12/20(金)視力のちがい
最近、さるクラシック音楽関係者と二人で食事をしました。
県民ホールに勤めてもうすぐ2年、そんなシチュエーションが
自分にもぼちぼち訪れるようになってきたのです。
クラシックというとハイソな感じがありますが、
その方は実に叩き上げの劇場人という物腰で、百戦錬磨の雰囲気があり
自分にバイロイト音楽祭に行った時の話をしてくれました。
あの、ワーグナーの聖地であるバイロイトに、その方は2度までも
行ったことがあるそうなのです。
私はバイロイトはおろかドイツに行ったこと自体がないのですが、
以前に照明家の吉井澄雄先生から伺った話をしました。
吉井先生によると、先生の照明デザインがあのように陰影に富む
ハイコントラストを志向したのは、1961年に体験したバイロイトが
源なのだそうです。クナッパーツブッシュ指揮の《パルジファル》、
その時の劇場空間の暗さは、それまで体験していた日本の劇場とは
隔絶していたのだそうです。
そういう話をすると、一緒に食事していたSさんは、
「ヨーロッパ人の目が受ける明るさは、日本人と明らかに違う。
彼らは明らかに、日本人より3割増くらいで明るく見えているはずだ」
と言い出すのです。つまり、体質的にみんな夜目が効くようなもの。
そう言われて膝を打ちました。
ロンドンで暮らした家の、あの暗さ、間接照明で本を読み、
パソコンを打っていた日々には、節約以外にそんな体質的な違いが
あったのだと気づきました。そう。あれはきっとそうに違いない。
帰国した時、好きな時間に電気を点け、好きな時間に風呂に入り、
好きな時間に煮炊きでき、出かけられることに自由を感じました。
今も、夜中に電気をつけて、こうして文章を書いています。自由だ。

