3/5(木)遠藤さんが亡くなった②
↑「芝居の大学」の時の様子です。
学生たちと遠藤さんのボートに伺ってお話を聴きました。
これまでに作られた仮面や人形の説明をしてもらっています。
遠藤さんは、
作品を通じて臆することなく”世界”や”宇宙”を語りました。
実に堂々とされた姿に、自分はいつも惹かれてきました。
日常の口こぼしや不満垂れ流しのような作品が多い中で、
遠藤さんの世界は、こちらを鷹揚な気持ちにさせてくれます。
昨日ご紹介した『恋に狂ひて』の他にも、
遠藤さんがごく初期に生み出し、いまだに形を変えて上演している
『極楽金魚』など傑作中の傑作で、そのどちらも、
ある個人の上に起こった悲劇があまりに巨大であるために
世界全体を滅ぼしてしまうというところまで行き着きます。
好きな相手には自分の全存在を捧げ、
一旦憎むとなるや、相手を宇宙ごと滅ぼすまで恨み骨髄、
という世界観です。
それが、もちろん大真面目であり、
真面目なだけでなく、どこかユーモラスでもあるというところに、
強烈に共感を覚えます。
特に『極楽金魚』の方は、演奏者と語り手兼影絵使いの2名という
少人数のバージョンを拝見して感激しましたから、
息子がもう少し大きくなったら、まず観せてやりたいものの筆頭です。
神話や叙事詩、説話、宮沢賢治に小さい頃から親しんできた自分にとって、
遠藤さんは趣味の話をする相手でもあり、
また「バリにはこういう話や表現があってね……」などと、
さらに深淵を示してくださる案内人でもありました。
ずっと取り組まれてきたインド叙事詩「マハーバーラタ」より、
「ドゥルソソノ」という王様のくだりを劇化したいと言っておられた
のが印象的で、その創作に立ち会いたかったとも悔やまれますが、
ああいう風に生きることと創ることが一体化した方の人生は
常に中断で終わるのでしょうから、仕方のないことです。
遠藤さんが逝かれて、世界から面白い人が減りました。
もう電話をかけてきてお喋りする相手がいないのも残念ですが、
今後は、遠藤さんが自分に示して下さったいくつかのヒントを掘り下げつつ、
別の面白い人との出会いを求めることにします。
『芝居の大学』の講義録には、
遠藤さんがお話しして下さった来し方や、創作の経歴、
指針とされてきた美学への語り下ろしをコンパクトに収めてあります。
もし興味のある方がいらっしゃいましたら、お声掛けください。

