5/22(月)『二都物語』本読みWS 第3回レポート
↑日本のスタンダード痰壺はこんな感じ
『二都物語』第3回は、内田一徹と光子の兄妹が登場する場面から始まりました。
妹の光子は万年筆工場で勤めていたものの、工場が火事となり、
顔が焼け、包帯で顔を覆った少女です。視界が狭まるせいか、火傷のためか、
視力にも問題がある。可哀想な妹の手を引いて、兄・一徹が現れる、
という格好です。
二人は火事の顛末をいろいろと回想しますが、
同時に、光子の妄想、願いが語られます。
彼女は、海の上を走るメリーゴーランドの馬に乗ることを夢見ています。
そして、その馬の燃える立て髪に触れようとして顔を焼かれたのだと
語ります。火事に襲われた少女が自分の体験を突飛に理解しようとする
様子に、兄・一徹は優しさから話を合わせているようです。
そこへ、噂の職安の人々に相手にされず、一人しゃがみこんでいた
リーランが割って入ります。彼女はベンチに商売道具である痰壺を置いて
地べたに座り込んでいたわけですが、そのベンチに兄妹が座りこんだ
わけですから、リーランが挑発されるとも訳ないともいえます。
リーランには思うところがあるらしく、光子と張り合い、兄・一徹に親しく迫ります。
優柔不断なところのある一徹は、リーランを突っぱねられません。
そうこうするうちに、例の痰壺に100円硬貨のお願いに応じる一徹。
すると、リーランの掴み上げた100円が支払口(突然に登場!)に投入され、
メリーゴーランドよろしく赤い立て髪の木馬がやってきます。
初めは光子と一徹とは一緒にこの馬に乗りますが、
リーランの計略によって、一徹だけは馬から降ろされ、
光子は馬とともに追い払われてしまいます。
二人っきりになったところで、リーランは一徹のなかに暗い記憶を
見出します。太平洋戦争末期。日本人を襲う朝鮮半島の人々の
運動が盛んになる中で、兄を人々に襲われ、自分もまた彼らによって
レイプされた記憶が蘇ります。痰壺の中から摘み上げられる100円の
とともに蘇る悪夢。『二都物語』の中でもとりわけ有名な場面でした。
来週で1幕が終わり、幕間に進みます。

